オナ禁にせよ、ポル禁にせよ、続かない人の特徴のひとつに「完璧主義」があげられます。
ポルノ依存症の調査を進めていると、次のような理由でポル禁を途中であきらめてしまう方が多く見られることに気が付きました。
- ポル禁の目標日数を決めたものの、うまくいかず(リセットしてしまい)、自己嫌悪に陥る
- 「一度でも見てしまったら全部台無しだ」と考えてしまい、少しの失敗でやる気を失う
- SNSや他人の成功報告を見て、「自分は意志が弱い」と比較して落ち込む
- 思うような成果(集中力の向上やモチベーションアップなど)がすぐに出ず、「意味がない」と感じてやめてしまう
完璧を求めすぎると、少しの失敗を許せず、苦しくなり、結果的に続かなくなってしまいます。
大切なのは、「リセットしてもまた立て直せばいい」「これまでの期間も脳の回復につながっている」という柔軟な姿勢を持つことです。
この記事は、いつもがんばっている完璧主義のあなたに向けて書きました。せめてポル禁に取り組む際には完璧主義を捨てて、もっと気楽に取り組くんでいいわけをお伝えします。
ポルノ&射精は「ほぼドラッグ」であり、その快感に人は簡単には勝てない
ポルノ視聴と射精の組み合わせは、ドラッグ並みのドーパミンを放出します。このとき、ドーパミンの放出量が増えれば増えるほど、快感が強くなります(注:ドーパミン自体が快楽物質というわけではありません)。
性的な興奮と射精は、他の自然報酬のどれよりも高いドーパミンとアヘン類の水準を生み出す。ラット研究によれば、性的興奮で生じるドーパミン水準は、モルヒネやニコチン投与で引き起こされるものに匹敵するそうだ。
『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』p. 101
そして、テクノロジーの進化によってポルノとスマホが結びついてしまいました。今や、スマホさえあれば、いつでもどこでも手軽にポルノによる強い快感を得られる時代になりました。だからこそ、それを自分の力で制御するのはとても難しいことなのです。
まずは、この現実をしっかり理解してください。ポル禁はそもそも「意志の力だけで完璧にやり遂げる」ことができるようなものではないのです。
たとえば、RPGのラスボスと戦っていると思ってください。ポルノという魔王は、戦略を整えながら少しずつレベルアップしていき、ときに仲間と助け合いながら、時間をかけてようやく勝てるような敵です。最後に勝てさえすれば、何回負けてもいいのです。
無駄なポル禁なんて一つもない、見なかった1分1秒が脳を回復させている
ポル禁の最終的な目標は何でしょうか。
依存症に関する研究の観点から言えば、「脳の快感回路を正常な状態に戻すこと」が目的だと言えます。中毒が引き起こす脳の変化については、こちらの記事で簡単にまとめています。
ポルノを断ち、脳をクリーンな状態に戻すことで、本来の自分を取り戻すことができます。その結果として、コミュニケーション力の向上、集中力の回復、活力の増加などが見られるというのが基本的な考え方です。
さて、このように脳を正常な状態に戻すことは「再起動(リブート)」と呼ばれることもあります。そして、再起動には3か月以上のポルノ断ちが必要という意見もあります。
しかし、ここで多くの勤勉な方がつまずきます。「よし、3か月やってみよう」と意気込んで、いきなり長期間のポルノ断ちに挑戦してしまうのです。
結果はどうなるでしょうか。ほとんどの場合、うまくいきません。私たちの独自アンケート調査でも、ポルノ断ちに取り組んだ日本人230名のうち、3か月以上続けられたのはわずか13.5%でした。
ですから、考え方を変える必要があります。「3か月も続けなければ意味がない」と考えるのではなく、ポルノを見なかった時間のすべてが、脳の回復につながっていると捉えてください。
ここで、神経科学者であるデイヴィッド・J・リンデン氏の科学的な裏付けのある説明を拝借します。
脳の中では因果性は双方向だ。(中略)脳には可塑性があり、行動経験で神経回路を変化させることができる。(中略)そのような活動(社会的・経験的治療法)も快感回路に変化を起こし、依存症のときに生じた回路の変化を元に戻したり、別の変化によって元の変化に対抗したりできるのだ。
『快感回路 なぜ気持ちいのか なぜやめられないのか』 p. 90
私たちの味方はまさにこの脳の可塑性(変化する力)です。これによって、ポルノ視聴によって活性化してしまった神経回路を、たとえば「ただ、ポルノを見ないこと」によって元に戻すことができます。つまり、見なかった1分1秒が、確実にあなたの脳を癒やしているのです。
たとえリセットしてしまっても、これまで積み重ねた時間は決して無駄になりません。あなたが頑張って耐えたその時間は、確実に脳にとってプラスになっています。このことを、どうか忘れないでください。
おわりに
完璧主義の人ほど、何事も高いレベルで達成しようとします。
ですが、ポルノ断ちに関しては、まず、完璧に絶つこと自体がとても難しいという現実を理解することが大切です。そして、たとえリセットしても、その努力は無駄ではないということを、ここで改めてお伝えしたいと思います。
完璧主義のあなたが、少しでも気楽な気持ちで取り組めるようになったなら嬉しく思います。
ポル禁は、力まず気楽に続けていくことが大切です。少しずつ脳を回復させ、気づいたときには自然と「再起動」にたどり着いていた…….それが、理想的なゴールのひとつだと思います。
共に、少しずつ前に進んでいきましょうね。
参考資料
- 『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』 ゲーリー・ウィルソン著、 山形浩生[訳]
- 『快感回路 なぜ気持ちいのか なぜやめられないのか』 デイヴィッド・J・リンデン 岩坂彰[訳]