筆者の経験上、ポルノ断ちの最大の敵となるのが日々の「ストレス」です。
仕事や人間関係でストレスが溜まると、ついポルノを見てしまう……そんな経験、皆さんにもあるのではないでしょうか。
では、なぜストレスはポルノ視聴を誘発するのでしょうか。もしかすると単なる思い込みで、ストレスとポルノ視聴のあいだに明確な因果関係はないのかもしれません。
今回はそんなストレスとポルノ断ちの関係を探っていきます。
事実、ストレスは依存症の高い再発要因になっている
快感と依存のしくみを解明した書籍『快感回路』で示されているように、事実として多くの依存症患者がストレスによって再発を繰り返してしまっています。
依存症の再発患者の70%以上が、再び薬物に手を出した際に、とくにストレスに満ちた出来事が関係していたと報告している。
『快感回路』 p. 123
本書によれば、依存症との関連において、ストレスが脳にどのような影響を及ぼすのかは、まだはっきりとは解明されていないようです。
しかし、私たちは経験的に理解していますよね。大変な仕事のあとにお酒を飲みたくなったり、ドカ食いしたくなったりするように、強いストレスがかかると理性が働きにくくなり、さまざまな欲望が増大する感覚があります。
とはいえ、こうした感覚的な理解だけでは納得しきれない部分もあるでしょう。そこで、もう少し論理的な説明がほしいと思い調べてみたところ、興味深い情報が見つかりました。
依存症がストレス系不全を引き起こす
この点について、ポルノ依存症の研究・体験をまとめた偉大な書『インターネットポルノ中毒』では、依存症が形成されると脳のストレス系に不全が生じることが示されています。
(前略)まず、ストレスはドーパミンとコルチゾールを増やし、ちょっとしたストレス要因でも激しい渇望に変えてしまう。キューがなくても、ストレスは増感した中毒経路を活性化させる。第二に、ストレスは前頭葉と執行機能を阻害する。これには衝動抑制や、自分の行動の結果を完全に理解する能力も含まれる。
『インターネットポルノ中毒』 p. 130
つまり、一度ポルノ依存が形成されてしまうと、ストレスに対して過敏になり、ほんのわずかなストレスでも強いポルノ渇望が湧き起こるようになります。そして、その衝動を抑えるための前頭葉の働きも弱まり、理性でブレーキをかける力が残っていない状態になってしまうのです。
私たちが体験する「ストレス → ポルノ視聴」の流れにも、これでひとまず合理的な説明がつきます。ストレスが直接ポルノに走らせるのではなく、依存症によってストレスに弱くなり、理性が抑え切れなくなるために起こる反応だった、というわけです。
ポルノ断ちとストレス対策はセットで
本記事では、ストレスが依存症を再発させる要因になっていること、そして依存症の進行によってストレス系が不全を起こし、その結果として再発を引き起こしやすくなることを見てきました。
これはポルノ依存症にも当てはまりますので、やはり、ストレスはポルノ断ちの失敗要因であり、最大の敵と言えるでしょう。
しかし、発想を転換すれば、日々のストレスを減らすことができれば、ポルノ断ちは成功しやすくなるということでもあります。
ストレス対策は人によってさまざまですが、一般的によく知られている方法としては次のようなものがあります。
- マインドフルネス瞑想
- 健康的な習慣すべて(食事・運動・睡眠など)
- ゆっくり入浴する
- 気晴らしになるような娯楽
- 仕事量を減らす
- 物事の捉え方を見直す(認知の調整)
中でも マインドフルネス瞑想は、ポルノ依存症の研究でもその効果が認められており、ぜひ取り入れていただきたい方法のひとつです。いつでもどこでもできるし、お金もかかりません。筆者も数年続けていてさまざまな効果を感じています。
また、否定的な感情や気分を紛らわすためのポルノ利用に対しては、自らの体験をあるがままに観察するマインドフルネス瞑想の効果が示唆されている。
『ポルノグラフィの問題ある利用が引き起こす生活問題の検討』
ポルノ断ちがうまくいかない原因は、もしかしたらあなたが抱えているストレスの度合いが高すぎるだけなのかもしれません。
ぜひ、日常生活を見直し、できる範囲でストレス対策を一つでも二つでも取り入れてみてください。心の負担が軽くなるほど、ポルノ断ちに再び取り組む力も湧いてきますので。
参考資料
1.『快感回路 なぜ気持ちいのか なぜやめられないのか』 デイヴィッド・J・リンデン 岩坂彰[訳]
2.『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』ゲーリー・ウィルソン著、 山形浩生[訳]
3.『ポルノグラフィの問題ある利用が引き起こす生活問題の検討』、日本性科学会雑誌第40巻1号

