1週間? 30日? それとも…1年?
ポルノ断ち(以下、「ポル禁」と呼ばせてください)を始めるにあたって、どのくらいの期間を目安にすればいいのでしょうか。
実はポル禁アカデミーでは日数ばかりにこだわる戦略はあまりおすすめしていません。「今日で14日目だ…!」「リセットしちゃった、明日からまた1日目だ…」といったようにカウントしていく戦略は、カウント自体に囚われすぎて苦しくなってしまったり、失敗してしまったときの罪悪感が強く出てしまうことが多いからです。
一方でこの戦略がうまくいっている事例も、ウェブ上や各種習慣化アプリ上の報告でよく見受けられます。「目標となる具体的な日数」を定めてそれに向かって日々歩んでいくのはゲームみたいで楽しいからかもしれません。ですので、カウント戦略は上手に取り入れればいいと思っています。
それでは、ポル禁の目安となる日数はどのくらいに設定すべきなのでしょうか?
神経科学の観点からは「4週間」、そしてポルノ依存に関する書籍『インターネットポルノ中毒』では「3か月」が一つの目安として挙げられています。
詳しく説明していきます。
4週間で禁断症状がなくなることが多い
スタンフォード大学医学部教授のアンナ・レンブケさんは、著書『ドーパミン中毒』で次のように説明しています。これは薬物依然症の方々の研究に関する引用です。
2週間では患者たちは多くの場合、まだ禁断症状を感じている。彼ら/彼女らは依然「ドーパミン欠乏状態」にあるのだ。他方、4週間では充分なことが多かった。
『ドーパミン中毒』p. 106
これに加えて、うつ病患者の研究では、4週間の断酒で80%の方々のうつ病が治ったという報告もあります。また、アンナ先生は自分の臨床体験を総括して次のようにおっしゃっています。
私の経験では、4週間を待たなくとも脳の報酬回路がリセットされる患者もいれば、4週間以上必要な人もいた。大抵の場合、長い期間、強力なドラッグを多量に摂っていた人はより長い時間かかると言っていい。また若い人は脳の可塑性が大きいため、年長の人よりも早く再調整ができる。
『ドーパミン中毒』p. 107
アンナ先生は「ドラッグ」を「麻薬などの薬物とその他依存症をもたらすもの・行動」と定義していて、ポルノ視聴についてもそれがドラッグであると明確に取り上げています。よって、上記の見解はポルノ断ちにも適用可能であると言えます。
この研究に従えば、ポルノの依存度合いと年齢によって変わりますが、4週間で気分がよくなり始める方が多いと結論づけられます。
3か月を目安に成功している人が多い
ポルノ中毒の研究で偉大な業績をあげられた故ゲーリー・ウィルソン氏は、著書で次のように述べています。
多くの再起動者(ポルノ起因のEDがない人)は通常、100日または3ヶ月を目指し、それをもっと短い途中の目標に区切る。ED持ちはときにずっと長い期間が必要だ。
『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』p. 150
「再起動」とは端的にいえば、ポルノ視聴によって悪影響を受けた脳を元通りにすることです。
ゲーリー氏がポルノ断ちのフォーラムで見てきた方々の多くが3か月を目安にして、ポルノ断ちを成功させています。
この事実は注目に値します。おそらく、多くの方にとってポルノ断ちは3か月程度が心理的にもちょうどいいのだと思われます。「明日から365日、ポルノを見てマスターベーションしてはいけません」と言われたら誰しも気が引けてしまいます。
一方で、同書では「最終的に重要なのは日数ではなく脳のバランスだ」と言及されていて、やはり回復のスピードには個人差があることを忘れないようにしたほうがいいでしょう。
データに裏付けられた日数目標は、希望になり得る
本記事では、4週間と3か月がポルノ断ちの目標になり得る根拠を取り挙げました。ポルノによる禁断症状は4週間で良くなる人が多い、また、3か月を目安にポルノ断ちを成功させている人が多いということがわかりました。
このようなデータに裏付けられた日数の目標は、ポル禁に取り組んでいる人には希望になり得ます。ゴールが見えない険しい道を毎日歩き続けるには相当な精神力が必要だからです。
一方で、ポルノ断ちは脳を回復させる作業であり、さまざまな要因によってその回復スピードには差があります。ですのでこの「4週間」と「3か月」にとらわれ過ぎずに、一つの指標やマイルストーンとして活用してみてください。
参考資料
- 『ドーパミン中毒』アンナ・レンブケ著
- 『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』ゲーリー・ウィルソン著