「世界の論文を一緒に読もう」シリーズの2回目です。
前回はデンマークの論文を取り上げました。まだ読んでいない方は、ぜひ読んでみてください。この研究ではポル禁3週間でさまざまな効果が得られることが示されており、ポルキニストにとっては大きな励みになる内容でしたね。
今回の論文はイギリスのノッティンガム・トレント大学で執筆されたものです。オープンアクセスの学術誌「PubMed Central」に掲載されているため、皆さんも閲覧できますよ。
The Pornography “Rebooting” Experience: A Qualitative Analysis of Abstinence Journals on an Online Pornography Abstinence Forum
(仮訳:ポルノからの「再起動」の体験談:オンラインポルノフォーラムにおける禁欲日記の定性分析)
研究について
研究の概要は次の通りです。
- 研究場所と年:2021年、イギリスのノッティンガム・トレント大学で実施
- 研究の目的:ポルノ断ちを試みる人々の体験を深く理解すること
- 研究方法:オンラインフォーラム「Reboot Nation」(2014年設立)に投稿された104件の男性メンバーによる禁欲日記を収集。収集した日記を体系的に分析し、テーマ分析を用いて4つの主要なテーマと9つのサブテーマを抽出。
ポルノ依存症の自助団体「Reboot Nation」には、登録メンバーがポル禁の体験談を記録できるとのこと。その禁欲日記をデータに扱っているのは興味深いです。日本には現在、大規模なフォーラムがないので、同じような研究はできません。
さて、外国の同志たちは何を思ってポル禁と向き合っているのでしょうか。自分の経験とも照らし合わせて、研究の結果を見ていきましょう。
主な発見
この研究からは次のようなことがわかりました。
- ポルノ断ちの動機:フォーラムメンバーは、ポルノの視聴が生活に悪影響を与えていると認識し、ポルノ視聴を完全に辞めることで脳の回路を繋ぎなおして、その悪影響を弱めようとしていた。
具体的には、1) 依存的なポルノ利用の克服、2) 現実での性的活動の障害や勃起障害、3) 抑うつ症状や不安症状などの精神的な症状の改善が主な動機となった。
なお、少量のポルノ利用がポルノ中毒を引き起こして再びリセットにつながると信じられていたため、ポルノ視聴の量を減少させたり、制限するアプローチは有効とみなされなかった。 - ポルノ断ちが難しいわけ:ポルノ断ちは大変むずかしいものであるとの報告があった。
「フラットライン(性欲が急激に減少すること)」に悩まされたり、反対に性欲が猛烈に高まるといった症状が出たり、パートナーとのセックスやポルノなしでのマスターベーションがトリガーとなってしまうことや、トリガーから逃れられないこと、リセットの心理的に複雑な影響などが、ポルノ断ちを難しくしていると示された。 - ポルノ断ちは戦略を整えれば達成できる:多くのフォーラムメンバーが、外部リソース(周りの助けやポルノサイトのブロックアプリなど)と内部リソース(認知行動療法てきな戦略)の活用、
そして行動戦略(エクササイズや瞑想・マインドフルネス、予定を詰めること、良質な睡眠をとること、コールドシャワーなど)を十分に用意すれば、ポルノ断ちは達成できると報告した。 - ポルノ断ちのポジティブな効果:ポルノ断ちを続けることで、ポルノの利用にだけでなく人生に対する自己コントロール感の高まりや、
性機能・自尊心の向上、社会的な関係の改善、ポルノ視聴への欲求の低下、活力の上昇、頭の冴え、集中力や生産性の向上、幸福感の高まりなどのポジティブな影響が起きることが報告された。
とくに最後のポルノ断ちの効果は参考になりそうですね。
この研究結果をポル禁にどう活用するか?
この研究は、これからポル禁を始めようとしている初心者ポルキニストにとっては最高の教材になると思います。
先輩方のリアルな体験を通じて、「なぜポルノを断つのか」「なぜうまくいかないのか」「どうすればつらい時期を乗り越えられるのか」などが、まるで地図のように示されているからです。
自分ひとりで戦っているわけじゃないと感じられますし、実際に効果のあった具体的な戦略も知ることができますね。
また、ポルノ断ちによる離脱症状がつらいときは、上記のようなポジティブな効果を思い出して、その効果を得た先にどのような人生が待っているかを思い描いてみるのもいいでしょう。
まとめ
以下、今回のまとめになります。
2021年のイギリスの論文『The Pornography “Rebooting” Experience: A Qualitative Analysis of Abstinence Journals on an Online Pornography Abstinence Forum』によれば、ポルノ断ちに励むオンラインフォーラムのメンバーは次のような体験を報告しました。
ポルノ断ちの動機
- ポルノが生活・精神・性的健康に悪影響を与えていると認識
- 完全断ちによる脳の回路の回復を目指す
- 減らすだけでは再発につながると考えられている
ポルノ断ちが難しい理由
- 性欲の急激な減少(フラットライン)や過剰な高まり
- セックスやマスターベーションがトリガーになる
- リセットの心理的に複雑な影響
ポルノ断ち成功のための戦略
- ポルノブロッカーや支援者などの外部リソースの活用
- 認知行動療法的などの内部リソースの活用
- 運動・瞑想・予定管理・睡眠・コールドシャワーなどの行動習慣の導入
ポルノ断ちで得られる効果
- 自己コントロール感の向上
- 性機能・自尊心・対人関係の改善
- 性的衝動の減少、集中力や幸福感の向上
ぜひ、皆さんのポル禁に役立ててみてください。
最後に:海外と日本のポル禁オンラインフォーラムについて
ちなみに自助団体であるオンラインフォーラム「Reboot Nation」には、2019年の時点でなんと15,000人もの登録者がいました。
Reboot Nationでは、メンバー同士でポルノ依存症に関する情報共有ができたり、ポル禁日記を書いて、お互いに閲覧し合ったり、コメントで励まし合ったりできるとのこと。
ん、待て、そんな環境、素敵すぎないか…? ポル禁は一人じゃなかなか難しい。膨大な知識と同じ熱量の仲間にスマホひとつでアクセスできたなら、どんなに心強いでしょうか。
日本にはここまで大規模なポルノ依存症関連の自助団体はありません。ただし、禁欲アプリはいくつか活気を感じるものもあります。
しかし、やはりここにも海外とのポルノ依存症に対する意識の差が表れていますね… うーん、ないなら作ればいい!国内最大級のオンラインフォーラムの立ち上げも視野に入れて、ポル禁アカデミーは一歩ずつ進んでまいります!
さて、最後までお読みいただきありがとうございました。
ポル禁アカデミーでは、ポル禁をがんばる皆さんを全力で応援しています!