今回は射精のメリット・デメリットについて考えていきます。
ただし、射精そのものを直接的に解明した研究はあまり多くなく、多くの情報は「禁欲」や「性行動全体(マスターベーションや射精頻度など)」を対象にした研究から得られています。
そのため、本記事ではポルノ視聴やマスターベーションといった関連行為も含めて、射精にまつわるメリット・デメリットを考察していきます。
射精の考察は慎重に
さて、まず大前提として、私たちは「射精のメリット・デメリット」に関する情報を扱う際には、細心の注意を払う必要があります。どのような場合でも、何らかのバイアスが情報に含まれている可能性があるからです。
たとえば、「オナ禁」を推奨することで利益を得られる立場の人は、射精のデメリットを強調し、その主張を押し出す傾向があります。
こうした点を踏まえて、インターネットの記事(医師の意見を含む)や禁欲に関する書籍などを調べてみると、射精に対する立場は大きく次の3つのグループに分けられるようです。
- 射精肯定派:射精は体に悪影響を与えないので、したいときにすればよい
- 自然射精派:体への良い影響と悪影響のバランスを考え、適度に射精するのが望ましい
- 射精反対派:体への悪影響を考慮し、なるべく射精しないほうがよい
情報を受け取る際は、発信者がどの立場に属しているのか、そしてなぜその立場を取っているのかを意識することが大切です。決して「射精は悪いことだ」と短絡的に考えないようにしましょう。
なお、このテーマについては、どの主張も根拠がやや不十分な部分が多いため、「確実な情報を提供するのは難しい」という前提でまとめていきます。引用元については、できる限り明示します。
それでは、射精のメリット・デメリットを一緒に見ていきましょう。
射精のメリット
まずは射精のメリットから取り上げていきます。
1. マスターベーションで男性ホルモンが一時的に増加する(論文あり)
マスターベーションによる射精の前中後でテストステロン(男性ホルモン)、コルチゾール、プロラクチンの値を測定した研究があります。測定の対象者は平均35.7歳の男性7名です。
この研究では、射精に向かうにつれて血中のテストステロン値が急増したと報告されています。これはうれしい結果ですね。また、射精後10分経つとだいたい元のテストステロン値に戻っています。
一方、ストレスホルモンであるコルチゾールも同様の動きをしていて、射精に向かうにつれて増加しています。そして、射精後10分たっても高い値を維持しています。ストレスホルモンということで不安になりますが、コルチゾールは、短時間の上昇であれば問題がないようです(これも要調査です)。
なお、性機能に関わるホルモンであるプロラクチンについても同様に射精に向かって増加し、射精後にはなんとマスターベーション前の2倍の数値になっています。このプロラクチンがいわゆる賢者タイムを発生させているようです。
この研究では各種ホルモンがダイナミックに変動するのがわかりますが、メリット・デメリットについての明確な記載はありません。また、被験者数が7名しかいないので、大規模な調査をしていただきたいと願うばかりです。
引用論文:https://www.auajournals.org/doi/10.1097/JU.0000000000000964.013
2. 射精しないと前立腺がんのリスクが上がる(論文あり)
こちらもよく目にする射精のメリットです。
この研究は大規模で、被験者はなんと31,295名、1992年にアンケートに回答してもらい、2010年にフォローアップ調査もしています。
結果としてわかったことが「頻繁に射精している人のほうが前立腺がんになりにくい」ということでした。
ただし、こちらの研究も因果関係がはっきりしていないため、内容を利用するには注意が必要です。
そもそも射精をいっぱいするような健康で元気な人だから前立腺がんになりにくいとも捉えられるからです。
引用論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27033442/
3. 射精すると寝つきがよくなる(関連論文ありだが…)
1つ目でも紹介していますが、射精後、体内でプロラクチンが急増します。
プロラクチンが増加すると性欲が減退して興奮度合いが下がるため眠くなるという説がありますが、こちらについては根拠(論文や科学的な解説記事)は見つけられませんでした。
シンプルに、射精によって体が疲れるため眠くなる、と説明された方が納得が行くかもしれませんね。
引用論文1: https://link.springer.com/article/10.1007/s00345-004-0496-7
引用論文2: https://www.auajournals.org/doi/10.1097/JU.0000000000000964.013
射精のデメリット
次に、射精のデメリットについて見ていきます。
オナ禁や禁欲のメリットは、言い換えれば「射精をしないこと」によって得られる効果を含んでいるため、そのまま射精のデメリットに繋がると考えて議論している点に注意してください。
ただし、射精そのものにどのような悪影響があるかを直接検証した論文は、現時点では見つかっていません。射精は生理的に自然な行為であり、そうした研究が少ないのも当然といえるかもしれません。
1. オナ禁7日目で男性ホルモンは急上昇する(論文ありだが…)
こちらはおそらくオナ禁界で最も有名な論文です。
28人の被験者にオナ禁をさせて、テストステロン値を測ると、7日目に元の値の約1.5倍にまで上がったと報告されています。また、7日目までは変動があまりなく、8日目以降は元に戻るようです。
本当でしたらうれしいですよね。7日サイクルで禁欲すれば、男性ホルモンを最大限に引き上げることができるわけですから。反対に、射精を頻繁にしてしまうとこのメリットを得られません。
ただし、この論文を考察するうえで注意すべきなのは、被験者数の少なさとこの論文が撤回されている点です。
以下の引用元を見ると「This article has been retracted.」と記載されており「retract」は「撤回する」の意味です。
どうやらこちらの論文は2003年に提出していて、2002年に提出したものと類似する点が多かったために撤回されたようです(こちらに記載あり)。
なぜ二度も同様の論文を提出したのか、謎は深まります…
引用論文:https://link.springer.com/article/10.1631/jzus.2003.0236
2. 3週間のオナ禁でも男性ホルモンは増加する(論文あり)
こちらの研究では、被験者10名に3週間の禁欲を行ってもらっています。
禁欲前後でテストステロン値を測ると、3週間禁欲した後の方がもともとのテストステロン値が高くなっていました。一方で、オーガズム(射精)によってテストステロンが変化することはありませんでした。
通常時のテストステロン値が高くなるということは、オナ禁にはホルモンの観点からはさまざまなメリットがあると言えるかもしれません。やはりこちらも射精を頻繁にしてしまうとこのメリットを得られません。
なお、被験者が10名と少ないので、こちらも大規模な調査が実施されることを願います。
引用論文:https://link.springer.com/article/10.1007/s003450100222
3. 射精すると筋肉が分解されやすくなる(関連論文ありだが…)
本記事の1つ目でも紹介していますが、射精後、コルチゾールが分泌されます。
そして以下のウェブ記事によると、コルチゾールが増えると筋肉が分解されやすくなるようです。
コルチゾールはストレスを感じたときに分泌され筋肉を分解する作用を持つホルモンなので、射精によってトレーニングで蓄えた大切な筋肉が分解されやすい状態になってしまうんです。
Diamond Online, 「モテる人材」になれる、テストステロンを高める筋トレとは
信憑性が不確かなので、引き続き調査が必要です。
引用論文:https://www.auajournals.org/doi/10.1097/JU.0000000000000964.013
4. オナ禁・禁欲実践者が報告している各種効果
現段階では関連する論文を見つけられなかったのですが、禁欲をしている方々の間では次のような意見があげられています。
- 肌がきれいになった
- 汗臭くなくなった
- 女性にモテるようになった
- 筋肉がつきやすくなった
- 自信がついた
- 集中力があがった
- 疲労を感じにくくなった
- コミュ力が上がった
- 喜びを感じやすくなった
さまざまな報告が見られますが、現時点では参考程度に活用するのがよさそうです。
ポル禁アカデミーは「自然射精派」、ただし…
射精のメリット・デメリットについて十分なエビデンスはまだ少ないものの、ポル禁アカデミーでは 「自然射精派」 の立場をとって情報を吟味・発信しています。
あくまで「ポル禁」さえできていれば、マスターベーションに伴う射精は適度にしていいという考え方を持っております。
たとえば次の点は明らかな事実であり、自然射精派の根拠となっています。
- 射精は本来、人間に備わっている自然な欲望であること
→ 自然に備わっている機能であるからこそ、射精を否定することは現実的ではありません。また、「射精は有害」といった極端な考え方は、精神衛生上好ましくありません。行き過ぎるとパートナーとのセックスすらも否定することに繋がりかねません。 - やりすぎるとエネルギーや時間を浪費すること
→ 一方で、射精は時間とエネルギーを確実に消費します。この資本主義・競争社会で豊かに幸せに生活していくには、過度なエネルギーを射精に使ってしまうのは賢明ではありません。この点から射精を手放しで肯定もできません。 - 個々に適度な回数は異なること
→ 結局、射精を肯定も否定できないのは一人ひとりが異なる特徴を持っていることも関係しています。年齢や体の反応の違いを考慮し、各自が自分に合った射精頻度を見つける必要があります。
なお、誤解を恐れずに言えば、ポルノ視聴を伴う射精は「不自然」な行為です。
忘れてならないのは、ポルノは、人間の性的興奮を引き起こすことを目的として作られた作品ということです。
そして、「ポルノはドーパミン製造機」とも言われるように、視聴することで脳内で大量のドーパミンが放出され、強い快感をもたらします。その快感は、これまで人間社会には存在しなかった「不自然な快感」と言ってよいでしょう。
したがって、「ポルノを見たいからマスターベーションをし、射精する」という行為は、不自然なものです。この時点ですでに、ポルノ依存の兆候が見られると言えるでしょう。脳の中に「ポルノをみて射精するのは最高に気持ちいいからまたやりたい」という強力な配線ができているからです。そういう配線がなければそもそもポルノに手を出しません。
一方で、完全にポルノを断っている人が、自然に性欲が湧き、ポルノを見ずに射精するという行為は、ごく自然な生理的反応です。ただし、一度ポルノを見てしまうと真に自然な性欲とは何か、わからなくなってしまうのかもしれません…(割愛)
話がそれてしまいました。結論として、やはり、射精をまったくしないのも、やりすぎるのもあまり好ましくありません。それで、いったい射精はどの程度すればいいのだろうか。そんな風に悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。
落としどころは人それぞれですが、例えばポル禁が生活に完全に定着し、ポルノ脳が可塑性によって寛解した後であれば、非常に強度の低いポルノ(妄想など)を用いて生活に支障のない範囲で適度に射精すること、またはパートナーとのセックスで射精することが一つの選択肢となります。
重要なのは、自分の生活や心の状態と向き合い、ポルノ視聴による強烈な快感を捨てて、一番心地よいと感じる射精の方法とペースを見つけることです。
以上です。
何かご質問等ございましたら、本記事下部のお問い合わせからご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。